熱気球を通じて、蒲郡市民や子供達に感動を与えたい 熱気球競技パイロット倉橋朋子さん
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スポーツ部門
蒲郡市在住。熱気球パイロット歴18年。アイリス・バルーン・チーム所属。国内の大会に年5回程度出場。2012年の日本選手権において女性1位となり、ポーランドで9月に開催される第1回女性熱気球世界選手権に出場が決定。初代チャンピオンを目指す。
熱気球を始めたきっかけを教えてください。
- きっかけは兄が持っていた雑誌に載っていた熱気球の記事でした。1988年か89年だと思います。もともと珍しいことをするのは好きだったこともあって、雑誌に書いてあった日本気球連盟に連絡をして、愛知県のチームを紹介してもらったのがはじまりです。
熱気球は気象条件に大きく影響されます。そのため、せっかく現地まで行っても条件が悪ければ飛ぶことが出来ません。また、熱気球のフライトはパイロットだけではなく、地上で気象状況を伝えたり、気球を回収したりする地上クルーの存在が不可欠です。一口に「熱気球で飛ぶ」と言ってもそうしたいくつかの役割をクリアできないといけません。地上クルーとしてサポートしながら、なかなかフライト出来ずに自分がフライトする機会を待っている時間が長くなると、このまま続けようか、どうしようかと考える時期もありました。
その後、チームから声がかかり、パイロットの資格を取ったのは1996年のことです。チームの先輩パイロットで競技フライトする方がいて、手伝ううちに「競技をやってみたら」とすすめられて競技の世界に入りました。
日本では、現在パイロット資格を登録している方が1200人ほどいて、うち300人ほどが女性です。競技フライトをするのはそのうちの一部の方ですね。
熱気球の競技は、どのように行われるのですか。
- 各大会では大会の競技委員長がその日の気象状況を見て、その日行うタスクを3~4程度決定します。タスクというのは、具体の競技種目でだいたい20種類ぐらいあります。
いくつか例を挙げると、マーカーと呼ばれる帯の付いた小さな砂袋を競技本部が決めたターゲットに落とし、投下したマーカーとターゲットの中心からの距離が短い人が勝ちとなるJDG(ジャッジ・ディクレア-ド・ゴール)や飛行中に競技者が宣言したゴールに向かってマーカーを投下するFON(フライ・オン)といったものがあります。
運営側も選手を楽しませたいという想いがありますから、いろんなタスクを組み合わせてきますね。私はフライ・オンはあまり得意ではないですけど(苦笑)。
大会の楽しいところは、大会それ自体のおもしろさもありますが、いろんな地方で開催されるので、その遠征も楽しみだったりしますね。ちょっとした旅行感覚で、それぞれの地方での楽しみもありますし、大会が終わったあとのチームのみんなとの打ち上げも楽しいです。
熱気球の操縦というとなんだか難しそうですが、その魅力は何ですか。
- 熱気球のフライトでは自然(気象)の変化をいかに読むかが非常に重要です。
熱気球は上下の移動しか出来ないので、風をとらえなくては行きたい方向に進むことはできません。熱気球が飛ぶ高度を変えればいろんな方向に風が吹いています。目的地に行くために、風を読み、自分が行きたい方向に吹いている風に乗らなくてはなりません。
経験を積むと、ある程度地形を見て、風の吹き方などを予想することが出来るようになります。そうやって少しでも風が読めるとうれしいですね。熱気球を始めてから、それまでの生活の中で感じていた風とは異なった感覚で風を感じるようになりました。
競技に関して言えば、迫ってくるゴールにドンピシャで行けたときですね。地上クルーとうまく連携して、すべてがうまくかみ合って、上手くゴールにマーカーを落とすことが出来たときは最高ですね。とても達成感がありますよ。
フライトはパイロットだけのものではありません。競技の際は、だいたい5,6人の地上クルーがいて、各クルーがそれぞれの役割を果たしています。チームの総指揮を執るチーフクルーの指示で車(チェイスカー)でゴールに先回りして、ゴール付近で風船を上げて、風の角度や強さを無線で伝えることや、投下したマーカーを回収しながら計測するなどの役割がありチームで連携してサポートします。
そのクルーの情報をもとに結果が出せるかどうかはパイロットにかかっているので責任重大です。それだけに結果を出せたときは、ほんとうにうれしいですよ。そういう日の打ち上げはとても盛り上がります(笑)
一つの目標に向かってチームのみんなで頑張る。達成感をみんなで共有できるのは、熱気球の競技ならではだと思います。
9月にポーランドで開催される第1回女性熱気球世界選手権では、チームの方と力を合わせて競技に挑まれるわけですね。
- 海外で競う大会は今回が初めてになります。女性だけ、というのはバスケットに乗り込むパイロットが女性のみということです。あとは他の大会と変わりませんので、地上スタッフは男性もいます。
今度のポーランドの大会は最近いっしょに飛んでいる江田さんという若い女性パイロットにコパイロット(co-pilot = パイロットの補佐)をお願いしています。
フライト中、パイロットは本当にたくさんのことをこなさなくてはなりません。
地図と自分のいる場所の地形を見比べて、自分が今どこにいて、ゴールがどこにあるかを探し、地上スタッフから無線で伝えられる風の情報などに耳を傾け、風を読んで高度を調整し、ゴールに向かう風に乗らなくてはなりません。
高度を調整するためにはバーナーの炎を調節するか、リップラインという紐を引いて気球上部のパネルを開閉させ、空気を抜くことで、上下に移動し風をとらえます。バーナーとパネルの操作を両方同時にすることもあるんですよ。自然が相手なので、風の状況も刻一刻と変化しますし。さらにゴールに近づけば、当然マーカーを落とさないといけないので、大忙しです。そうしたことを分担してくれるのがコパイロットです。
江田さんは海外経験もあり頼りになるので、いっしょに飛んでくれればとても心強いですね。
初めて行われる女性大会で、自分が世界でどのくらいの順位なのか、よく分かっていないんです。毎年、私が出場している栃木の大会に参加しているプロのイギリス人女性がいるんですが、彼女が上位に入ってくるのは間違いないと思います。同じ大会に出たことがある以上、彼女と互角に闘えたらいいですね。
コパイロットの江田さんを始め、チームのみんなの力を借りて上位を目指したいと思います。
まずは9月の第一回女性熱気球世界選手権に向けて準備されていくと思いますが、今後どのような活動をしていきたいと考えていますか。
- 今回の女性熱気球世界選手権出場で職場の関係者が中心になって「倉橋朋子を支援する蒲郡市民の会」を結成してくれました。そこからの声をかけていただき、地元蒲郡の企業株式会社ニデックさんがスポンサーをしていただけることになりました。まさかスポンサーまでついていただけるとは思ってもみなかったのでとてもありがたいです。また、「市民の会」を通じて新しい出会いも数多くあり、みなさんとても好意的に応援をしてくださいます。
私は今まで蒲郡で何も活動してきませんでした。恩返しというわけじゃないですけど、蒲郡市民の方や、子供たちに気球とふれあう機会を作っていきたいと考えています。少しでも気球に興味が持ってもらえるようになるとうれしいです。
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いつか子供の頃に気球を見て好きになった蒲郡出身のパイロットが育ち、国内外の空を飛んで活躍する日がくるかもしれません。
9月の第一回女性熱気球世界選手権での活躍をお祈りしています。
2014年7月取材
〔関連リンク〕
倉橋朋子を支援する蒲郡市民の会 http://tomoko-supportersclub-gamagori.aichi.jp/
※記載されている内容・写真は、調査当時のものですので、最新の情報とは異なる可能性があります。
必ず事前にご確認の上おでかけください。
(転載/穂っとネット東三河)