<東三河のキラリ人 VOL.1 >硯製造販売 「清林堂」 足木 勇さん 〜穂っとネット東三河〜
東三河でがんばる人、輝いている方の直撃インタビューをシリーズで掲載
Vol.001
硯製造販売 「清林堂」 足木 勇さん
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技術部門
鳳来寺山の開山から千三百年。
ここを訪れた観光客のお土産品として硯は大好評でした。
中央構造線という断層が走っているこの地域では、金鳳石・煙巌石・鳳鳴石という三種類の硯に適した石が採れ、最盛期には7~8軒の硯屋さんが表参道に並んでいました。
現在は二軒の硯屋さんが、昔ながらの手彫りにこだわり、硯を作り続けています。
その内の一軒である「清林堂」の四代目ご主人である足木さんにお会いしてきました。
硯職人というお仕事をどのように捉えてみえますか?
- 珍しい仕事だからテレビなどの取材もあるけれど、別に大した職業とは思っていません。
お茶碗と同じように実用的なモノツクリと感じています。
江戸時代と変わらぬ手法による手彫りで、芸術作品ではないけれど、お客さんに長年、愛着を感じてもらえるような使いやすい硯にしたいというこだわりを持っています。
ただ、仕事はあくまでも生活の糧です。
特別に広告や宣伝、営業などをしたこともありませんが、その分ストレスを感じることも無い生活ですよ。
硯を彫る作業の流れはどのような手順ですか?
- 鳳来寺山へ入り、自分で石を採ってきます。
前回採りに入ったのは五年前です。
以前に比べれば採れなくなりました。
でも、硯を彫る数も減ってしまったので…。
まず、採ってきた石の表情を見て、硯の厚さに「割り」ます。
堆積岩の層に沿って板状に割るということです。次は「削り」です。
硯の底の裏面が平らでなければ、墨を磨る時にガタガタして収まりが悪いので、自分の感覚を頼りに削ります。
そして「彫り」になります。
鉛筆で削る縁を線引きして、6種類のノミで削ります。
刃先は堅いのですが、それでも磨り減りが速く、父親の代までは刃先を造る鍛冶もしていました。
今は岡崎の石屋用の硬質のチップを用いています。最後に「仕上げ」で砥石と紙ヤスリで磨き、漆を塗ります。
一連の作業を一ヶ月で二十個ほどのペースで製作しています。
『石の表情』とはどういうものなのでしょうか?
- 石は天然のものですから色々な異物やムラがあります。
だからバランスを良くするために、どこかを取り去って硯の形を整えます。
「割り」の時、ヒビがある石は叩くとボクボクというような音がします。
逆に質の良い自然石に当たった時は、意欲を掻き立てられ、仕事が楽しみになりますね。
出典
- 「キラッと奥三河 ―人・物・文化・企業―」
No.15 自然に彫る硯 足木 勇さん
訪問日 平成23年10月7日
訪問者 新城設楽山村振興事務所 山村振興課 宮内一郎
(転載/穂っとネット東三河)